鬼課長の憂鬱
詩織のアパートは、彼女が言った通り、俺のところより若干だが狭そうだった。しかしさすがと言うべきか、綺麗に整頓され、いかにも女性の部屋という感じで、匂いなんかも良かった。
運ぶ荷物は、取りあえず車に積める範囲のなるべく場所を取らない物だけにし、後は様子を見て、いずれは業者に引き取ってもらってアパートを解約する事になった。
詩織は準備が良く、ここに引っ越して来た時のダンボール箱をたたんで置いてあり、それに荷物を入れていった。鍋や包丁やまな板とかの台所用品を特に重点的に。
おおよそダンボール箱に詰め終わり、フッと息をつきながら、俺はある物をジッと見た。それは、ここへ来た時からずっと気になっていたのだが、ソファーだ。
ベージュの2人掛けのソファーに、同色のクッションが2つ。見るからに座り心地が良さそうで、詩織がそこに座ってくつろぐ姿が容易に想像出来た。おそらく詩織は、大半の時間をこのソファーの上で過ごして来たのではないか。そんな事を思ったりもした。
「これ、持ってく?」
「ううん、置いてく」
「なんで?」
「だって、大きいもの。向こうの部屋が狭くなるでしょ?」
「え? そうでもないだろ?」
俺は頭に描いた。このソファーが俺の部屋に来た場合の状態を。確かに今の状態では狭くなるが、余計な物を片せばいいんじゃないかな。あれやこれやを。そもそも、同じ面積と思われるこの詩織の部屋で収まってるんだから、置けないわけがないんだ。
「やっぱり持って行こう? 車にはギリだけど乗ると思うから。あ、でもなあ……」
「ん?」
「今日は諦めて、後で業者に頼んで運んでもらおう」
「どうして? そんなの面倒だし、お金がもったいないでしょ?」
「確かにそうだけど、運べないだろ、これは……」
おそらく重さは大した事ないと思うが、大きさがなあ…… 階段もあるし、俺一人じゃ運ぶ自信がなかったんだ。
「おにいちゃん!」
「な、なんだよ」
「私を甘やかさないでって、言ったよね?」
なぜか詩織は腰に手を当て、俺を怒った顔で睨んでいた。
運ぶ荷物は、取りあえず車に積める範囲のなるべく場所を取らない物だけにし、後は様子を見て、いずれは業者に引き取ってもらってアパートを解約する事になった。
詩織は準備が良く、ここに引っ越して来た時のダンボール箱をたたんで置いてあり、それに荷物を入れていった。鍋や包丁やまな板とかの台所用品を特に重点的に。
おおよそダンボール箱に詰め終わり、フッと息をつきながら、俺はある物をジッと見た。それは、ここへ来た時からずっと気になっていたのだが、ソファーだ。
ベージュの2人掛けのソファーに、同色のクッションが2つ。見るからに座り心地が良さそうで、詩織がそこに座ってくつろぐ姿が容易に想像出来た。おそらく詩織は、大半の時間をこのソファーの上で過ごして来たのではないか。そんな事を思ったりもした。
「これ、持ってく?」
「ううん、置いてく」
「なんで?」
「だって、大きいもの。向こうの部屋が狭くなるでしょ?」
「え? そうでもないだろ?」
俺は頭に描いた。このソファーが俺の部屋に来た場合の状態を。確かに今の状態では狭くなるが、余計な物を片せばいいんじゃないかな。あれやこれやを。そもそも、同じ面積と思われるこの詩織の部屋で収まってるんだから、置けないわけがないんだ。
「やっぱり持って行こう? 車にはギリだけど乗ると思うから。あ、でもなあ……」
「ん?」
「今日は諦めて、後で業者に頼んで運んでもらおう」
「どうして? そんなの面倒だし、お金がもったいないでしょ?」
「確かにそうだけど、運べないだろ、これは……」
おそらく重さは大した事ないと思うが、大きさがなあ…… 階段もあるし、俺一人じゃ運ぶ自信がなかったんだ。
「おにいちゃん!」
「な、なんだよ」
「私を甘やかさないでって、言ったよね?」
なぜか詩織は腰に手を当て、俺を怒った顔で睨んでいた。