鈍感ちゃんと意地悪くんの周囲の人々
「うあ、中川、トイレ行けっ」

慌てた様子で、それでも気遣って、小声で長岡君が言う。
ティッシュを一枚、差し出された。

さっき委員長が言っていた、
「ひどい顔」が、
「もっとひどい顔」に、なってるんだろう。

「ん、行ってくる」

わたしは、そっと教室を出た。
ちらりと振り向くと、委員長と長岡君が、心配そうにこちらを見ていた。

二人共、わたしが失恋して傷ついて、泣いていると思ったのかも知れない。
けど違う。

そもそも失恋するって知ってたし。
振られて、区切りをつけたかっただけだもん。

こんなこと、思うのも言うのも恥ずかしいけど。
人の優しさが嬉しくて、涙が出てくる。
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