鈍感ちゃんと意地悪くんの周囲の人々

「付き合ってはないけど……。
片思いかな、今のところ」

はにかむ瀬田君に、わたしの心は暗くなった。
一瞬でも、喜んでしまった自分がやっぱり、バカバカしい。

あ、そうなんだ、と平気そうな顔をして、席に戻ってカバンを手にする。
レジでお会計を済ませて、店を出る。

心配そうな加奈子に笑顔を向けて帰ろうとしたところで、店内から二人が出てきた。

あ……。

瀬田君が、立花さんのおでこにキスを落とした。

薄暗い中、オレンジの街灯に照らされる美男美女のキスシーン。
わたしは、溢れる涙を止めることもなく、見とれてしまっていた。

かなわない、絶対に……。
悔しいけど、お似合いだ。

瀬田君の立花さんに向ける愛情を、これでもか、と見せつけられてしまった。