私とキスと横恋慕。




「お待たせ、桐山」


「いいよ。帰るぞ。」


「え……うん。」



教室で顔を合わせてみれば、桐山は何事もなかったように冷静な顔をしている。


くそ~!

さっきまで顔赤くしてたくせにー!!



桐山って今までも浮気したことあんのかな…。

なんか慣れてる感がある。




「桐山って今まで何人の女の子と付き合ったことある?」


「っっ、お前なー

そういうこと普通彼氏に聞く?」



言った後で桐山は「あ」という顔をした。



そんな顔したって遅い。

もう聞いちゃったもんね。

『彼氏』だって。

たとえ間違えただけでも

嬉しい。



桐山は私から目をそらすと、また言葉を続けた。




「彼女なんていなかった。

彼女気取りはたくさんいたけど。」


「へぇ~意外。

もっと慣れてんのかと。」


「ま、慣れてはいるかな。」


「うげぇ。サイテーだな。」



桐山は目を細めてケラケラと笑った。



こんな顔、美羽にも見せるのかな。


彼女は美羽なんだから

そりゃあもっといろんな顔見せてるんだろうけど。


どうかこれが私しか知らない顔ならいい。






< 106 / 277 >

この作品をシェア

pagetop