私とキスと横恋慕。
「お待たせ、桐山」
「いいよ。帰るぞ。」
「え……うん。」
教室で顔を合わせてみれば、桐山は何事もなかったように冷静な顔をしている。
くそ~!
さっきまで顔赤くしてたくせにー!!
桐山って今までも浮気したことあんのかな…。
なんか慣れてる感がある。
「桐山って今まで何人の女の子と付き合ったことある?」
「っっ、お前なー
そういうこと普通彼氏に聞く?」
言った後で桐山は「あ」という顔をした。
そんな顔したって遅い。
もう聞いちゃったもんね。
『彼氏』だって。
たとえ間違えただけでも
嬉しい。
桐山は私から目をそらすと、また言葉を続けた。
「彼女なんていなかった。
彼女気取りはたくさんいたけど。」
「へぇ~意外。
もっと慣れてんのかと。」
「ま、慣れてはいるかな。」
「うげぇ。サイテーだな。」
桐山は目を細めてケラケラと笑った。
こんな顔、美羽にも見せるのかな。
彼女は美羽なんだから
そりゃあもっといろんな顔見せてるんだろうけど。
どうかこれが私しか知らない顔ならいい。