私とキスと横恋慕。




「…………」


「桐山ってば!」


「…………」



沈黙を破らない桐山に私の胸がキリキリと痛み出す。


ヤバい。

なんか、嫌な予感がする。



ベッドから降り、床に座る桐山にしがみつくように抱きついた。



「…好きだよ、桐山」


「沙々……」



桐山が体勢を変え、私が床に仰向けに寝転ぶ形になった。

目の前には桐山の整った顔。



と、とうとう!?



緊張しつつも、ようやく私に応えてくれた桐山に、嫌な予感が薄れていく。



手を伸ばし、今度は私が桐山の頬の傷にそっと触れた。

私を守るために作ってくれた傷。



「痛い?」


「痛くねぇ」



ああ、そっか。

自分より大切なものができるってこういう感覚なんだ…。



「お前の傷に比べれば…」



そして桐山も同じ気持ちでいてくれてる。




それだけでもう十分だよ。




だから


だから、そんな悲しい顔しないで。









「俺じゃお前を幸せにできない。」

「今幸せだよ。なんでそんなこと言うの?」

「守れない。また危ない目に巻き込むかもしれない。」

「構わない!桐山がそばにいてくれれば…!」












「別れよう。」






ズシリと重たい鉛のようなものが私の心臓の奥に沈んでいった。






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