私とキスと横恋慕。



「はぁ、はぁ…」


長かったキスが終わり、呼吸を整える。


ふと上を見上げると、同じように呼吸が乱れている桐山がいた。

久々にこんなに近くで顔見たな…。


私が桐山を凝視していると、
桐山の顔は珍しく赤くなり、
それを隠すように私を抱き締めた。


さっきまでの強引なキスとは打って変わって、
綿雪に触れるかのように優しく優しく抱き締めた。



「っ、相変わらずお前ちっちぇな。」

「っはぁ!!?」


キスの直後の感想がそれ!?

私が桐山をにらむと、
桐山はふっと笑いをこぼして、私の頭をポンポンっと軽く叩いた。


「お前、俺と別れてから何考えてた」

「え…」

「俺は…お前のことばっか考えてた。」


その台詞を聞いただけで、私の今までの苦しさも痛みも全部吹っ飛んだみたいだった。


「俺と違って、どんどん前に進んでくお前が、憎くて、羨ましくて…焦った。

灘崎と話せねぇように常にお前を意識して、神経すり減らせて、
それでも笑ってるお前が憎くて、でも…



好きで…」



この人は

こんなに弱々しい人だっただろうか。

こんなに…いとおしい人だっただろうか…。



「いっそ、誰のものにもならないように、
誰にも傷つけられないように、
監禁でもしてやろうかと思ったこともあった。

…気持ち悪いだろ?
俺から別れようって言い出したくせにな。」


私は桐山の肩に顔を埋めながら、
ブンブンと頭を横に振った。





< 203 / 277 >

この作品をシェア

pagetop