私とキスと横恋慕。
***
しばらく抱きしめあった姿勢のまま、
お互い何も言わず動かずだったが、
数分後、桐山が口を開いた。
「沙々」
あ、名前…
久しぶりに呼ばれた…。
そんなことさえも、嬉しくて涙がまた溢れる。
「もっかい俺と付き合え。」
「フフッ、こんなときまで命令?」
「うっせぇな」
「これで二回目の横恋慕も終わりだね。」
「……」
私は瞳にためていた涙を拭い取ると、
大きく深呼吸をした。
涙で一度洗った視界は、以前より澄んでいる気がする。
「んで、返事は?」
命令しといて何さ!
って思ったけど、まぁ今回ばっかりは許す。
怒る気持ちになんて到底なれないし、
何より早く返事がしたくてたまらなかった。
「しょうがないな、もう」
なんて、憎まれ口を叩く私もお互い様か。
私たちは穏やかな笑みを浮かべると、
もう一度
誓うように
キスを交わした。