私とキスと横恋慕。



「沙々もやりたいこと考えてみなよ。
提出までもうちょっと時間あるしさ!」

「うん。そうする…」

「あ、時間だ…。私塾だから先行くね!」

「そうなんだ。頑張ってね!」

「また明日。」


美羽は笑顔で手を振りながら、教室を早歩きで出ていった。


私も美羽みたいに目標持って受験とか就職とかに臨まないといけないんだろうけど…

「はぁ~…」

憂鬱だ…。

まず進路について考えること自体嫌だ。

だって…こんなに楽しい高校生活が終わっちゃうんだよ?
先のことなんて考えずに、ひたすら今を楽しんでいたいのに…。

こんな考えだから景に子供っぽいって言われるんだろうな。



景のことを思い出し、教室を見渡すと、
誰かと話している姿を見つけた。

話してるのは……灘崎くん!

前灘崎くんと話したとき、「飽きられたのかな?」って悲しそうに言ってたから、なんかちょっと嬉しい。

やっぱ意外と気が合うのかも、あの二人。



二人は話し終えると、景がこっちに向かってきた。


「景。」

「お前な…見すぎ。」

「え?そんなに見てたかな…。」

「灘崎が気ぃ遣って、沙々が呼んでるとか言ってきた。」

「ご、ごめん!別に呼んでたわけじゃ…」

「まぁいーよ。
帰ろーぜ。」

「……。
うん!」


ほらね。
こういうちょっとした、でもかけがえのない幸せも、
高校が終わったらそう簡単に見つけられないかもしれない。

だから、やっぱり進路のことを考えるのは嫌だな…。




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