【完】『ふりさけみれば』
あのね、とみなみはいう。
「こないだ辞令の内示が出て、記者になるか支局かで選べって話になって」
「うん」
「どっちにしろ原稿は読めるからニュースの現場には行けるんだけど、ロンドン支局だからさ」
それで色々考えているうちに不安定になって、京都に来て一慶の顔を見た途端、こらえ切れなくなってみなみは泣いてしまったらしい。
「で、みなみちゃんはどうしたいん?」
「それが…分からない」
確かに。
仮に記者となっても元々の志望ではないから、他より遅れは取る。
そこへ。
みなみは自分が優秀でないことを自覚しているようで、
「アナウンサーとしても中途半端なのに、記者になっても中途半端になりそうで」
どうも。
自信を失っているようであった。