【完】『ふりさけみれば』
一慶はしばらく考え込んでいたが、
「みなみちゃん、京都は何日間おる?」
「明後日帰る」
ほんなら善は急げや、というと、みなみの手を取って外に出てヘルメットを渡し、例の黄色のミニバイクに打ち乗って、
「そういやまだ、大原行っとらんかったやろ?」
と、みなみを後に乗せた。
椿寺の脇を、西大路通に出る。
嵐電の白梅町の交叉点を今出川通に折れた。
今出川通を東に走り、御苑を右に見て加茂大橋を渡ると、出町柳の京阪線の駅を左へ。
あとは叡電に添うように勧修寺を上がり、八瀬を過ぎると大原になる。
みなみは生まれて初めてのタンデムであったが、とにかく振り落とされないように一慶の腰にしがみつくのだけで精一杯であった。
景色を眺めるゆとりが出てきたのは勧修寺を過ぎて八瀬に入ったあたりで、この近辺になるとひなびた山あいの里山が広がりはじめている。