【完】『ふりさけみれば』
続けて、
「前に松田ちゃんの件で軽くヒス起こしたとき、どないなるか思ったわ」
よう辛抱したな、というと、
「これ、お土産」
そういうと、小さな紙袋を渡した。
みなみが見ると抱稲の紋が打たれてあって、
「伏見稲荷大社」
とある。
「女子の大好きなパワースポットの御守や」
他の子には内緒やで、とだけボソッというと、どこかイタズラ小僧っぽい笑顔で、みなみが礼をいう間もないほどの早さでスッと消えて行く。
和服姿の一慶の下駄の足音だけが響いていた。