【完】『ふりさけみれば』

そのあたりの深意は一慶は測りかねた。

ただ。

手紙に変化はあった。

それまで「先生」であったのが「一慶さん」になり、今は「カズさん」と呼び名が変わっている。

かくいう一慶も。

前は「橘くん」であったのが、今は「みなみちゃん」と呼んでおり、

「お前らは高校生か」

と、力にからかわれる始末であった。

そういうとき。

一慶は露骨に渋い顔で、

「お前みたく女遊び散々やらかして来たのとちゃうから、一緒にせんといとくれやっしゃ」

とやり返す。

確かに。

顔が整った力は昔から女受けがよく、盆栽屋の六代目になったときなんぞは、

──イケメン過ぎる盆栽屋。

といった触れ込みで地元のテレビ局が生中継を出すという騒ぎが起きたほどである。

その点。

一慶は武骨で、媚びるところが全くない。

まるで対照的であった。



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