【完】『ふりさけみれば』
かくいう一慶はというと、
「案外ひとりが気楽で、何しろ多少は自堕落でも貯金崩しても、おのれの始末はおのれで着けなアカンからやな」
といい、相談らしい相談もない。
もっとも。
何か見付からない物がある、となると、
「なけりゃ作りゃえぇ」
といって、手元に残されてあるあり合わせの物で作ったりして、当座の用件を達成してしまう。
そういった着想であるから無駄に買うこともないし、誰かに無駄に頼むこともない。
逆に。
「他人ほどあてにならんもんはない」
といい、頼み事をほとんどしない。