【完】『ふりさけみれば』

何日間か経った。

「時間、空いてる?」

というみなみからのメールが来た。

一慶が返すと、

「急だけど会わない?」

と戻ってきた。

みなみは色好い返事は期待してなかったが、

「えぇよ」

という予想外の返信に、

「ほんとに…? ねぇカズさん、大丈夫なの?」

と思わず、みなみは訊いてしまったぐらいである。

場所を決めるとみなみは、新大阪の駅から東海道線で、まず京都駅へ急いだ。

京都からは地下鉄に乗り継ぐ。

しばらく揺られ、今出川で降りて改札をくぐると、

「どないしたんや急に」

一慶が待っている。

「ごめんね突然」

「…確かに突然やな」

口ではそういうことをいうが、別に一慶は怒っていない。

みなみは、

「どっか、ゆっくり話せる場所がいい」

「それなら」

平野神社がえぇかな、というと、地上に停めてあった例の黄色のミニバイクで、みなみを後に乗せ、

「しっかり捕まっとき」

いうが早いかスロットルを回した。




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