【完】『ふりさけみれば』
その頃。
東京のアナウンス部では、みなみがいなくなったことで問題が発生していた。
いわゆる、
「ガッツリ女子アナ」
というのが、他局で人気になり、ランキング調査で一位を取るほどの看板女子アナに成長してきたのである。
みなみがアナウンス部にいた段階では、
──ただの大食らい。
という認識しかなかったのが、その他局の女子アナの登場によって、形勢が変わってしまったのである。
人気は、視聴率に直結する。
その他局の女子アナが出ている時間帯の番組は、軒並み視聴率を食われ始めた。
すでに課長となった清家がこれに気づいたのは、みなみが大阪の文化部へ移ったあとである。
これには、
「いったい人事は何を見ていたんだ!」
と、声を日頃は荒らげない清家が担当を呼びつけ怒鳴りつけたほどであった。