【完】『ふりさけみれば』
いつも。
一慶はみなみに対して──特に付き合い始めてからだが──前にテレビで見せていたような毒舌はいわない。
それは。
きっと世渡り下手な一慶なりに、みなみを気遣っているのかも分からない。
まして。
デートで、
「こうしてていい?」
とみなみが肩にもたれようとすると、嫌な顔をせずに一慶は肩を貸してくれる。
いわば。
みなみの多少のわがままを、一慶は受け止めてくれるのである。
年齢的なものもあるのかも分からないが、
「みなみの望みはうちの望み、やからね」
と一慶は何気なくいった。