【完】『ふりさけみれば』
そういった一慶の気配りがはっきりあらわれた出来事がある。
付き合って初めてのクリスマスが近づいた頃、
「あのさカズ…クリスマスは仕事なんだ」
というと、
「好きな仕事やろ? めいっぱい気張り」
と、きっと一緒に過ごしたかったのかも知れなかったのに、一慶が朗らかな調子で返事をしたことがあったのである。
さすがに。
罪悪感をおぼえたみなみは、そのあとの年末の休暇を函館に帰らず、
「カズとカウントダウンしたいから」
と、西陣の一慶の家で新年を迎えた。