【完】『ふりさけみれば』
2 目指すものは
桜の季節が来た。
京都の街がもっとも華やぐ時季であり、また観光客がもっとも増えるシーズンでもある。
みなみは関西で、初めての春を迎えた。
時宜を。
待っていたかのように、
「みなみに見せたい風景があるんやけどな」
というと一慶は、タンデム出来るようにと新しく買い換えた真っ赤なドラッグスターで、
「ほな行こか」
と、ちょっとしたツーリングに出た。
市内を抜け、山のほうへと道をくねくね曲がりながら進んでゆくと、古めかしい寺が見えてきた。
「あれや」
そこには、
「常照皇寺」
とある。
当初みなみは読めなかったが、
「じょうしょうこうじ」
という。