【完】『ふりさけみれば』
そんなある夜。
いつもなら京阪線か阪急線で帰るみなみが、
「泊まっちゃおかなぁ」
と、一慶の腕にしがみついた。
正直なところ、
(えっ…どないしょ)
一慶は戸惑った。
泊まることそのものは、取り立ててやぶさかではない。
が。
仮にも男と女である。
ことが起きない、という保証はない。
(そこ分かっとんかなぁ)
瞬時に働いたのは、保身というよりも、冷徹な分析によって打ち出された考察であった。