【完】『ふりさけみれば』

そんなある夜。

いつもなら京阪線か阪急線で帰るみなみが、

「泊まっちゃおかなぁ」

と、一慶の腕にしがみついた。

正直なところ、

(えっ…どないしょ)

一慶は戸惑った。

泊まることそのものは、取り立ててやぶさかではない。

が。

仮にも男と女である。

ことが起きない、という保証はない。

(そこ分かっとんかなぁ)

瞬時に働いたのは、保身というよりも、冷徹な分析によって打ち出された考察であった。

< 142 / 323 >

この作品をシェア

pagetop