【完】『ふりさけみれば』
みなみの目は、少し潤んでいた。
その潤んだ、少し茶色みの強い瞳でじっと見つめられてしまうと、日頃は泰然とした一慶も平静ではいられなくなる。
黙った。
だが。
動いたのは、みなみのほうであった。
「カズ…大好き」
今度は。
ただの接吻ではない。
唾液で湿った温かい舌をくねらせてきた。
完全に理性的なリミッターの外れた濃厚なそれは、一慶の唇を犯し、舌を犯し、さらには大脳まで犯してくる。
これには。
頭脳より先に。
一慶の身が反応してしまっている。
抗い切れない。
「明るいままでは、さすがに恥ずかしいやろ」
みなみを姫のように抱きかかえると、ベッドに座らせすぐ照明を落とした。
あとは。
生臭い物理的な行為によって、一慶がみなみの中に果てるまで、互いを求め合う行動は続いた。