【完】『ふりさけみれば』
3 辞令
朝。
一慶はみなみを起こさないよう、気配を消しながらベッドを抜け出た。
振り向くと。
みなみは一糸まとわぬ裸身を柔らかな毛布にくるんで、まるで邪気のない夢でも見ているような、穏やかな寝顔で静かな寝息を立てている。
この。
ときおりみなみが見せる、無防備に近い、構えのない表情に、一慶は惹かれていたのかも知れない。
そのとき。
みなみの目が開いた。
「…おはよう」
「おはよう」
すでに下着をつけていた一慶はみなみをふんわりと抱きしめ、
「これはみなみさえよければの話なんやけど…結婚を前提にしようかなと」
ずいぶん思い切った内容を、しかし少し遠回しな言いかたでいった。
みなみは、
「うん」
ごく素直に頷いた。