【完】『ふりさけみれば』
あまりにもみなみが素直に承諾したので、一慶は少し驚いた顔をしたが、
「みなみは素直やなぁ」
そういうと軽く、みなみのストレートの長い髪を撫でた。
そういうことで。
みなみは着替えて身支度をととのえると、再び大阪へ仕事に戻ったが、
(私でいいのかな?)
という不安めいたものが頭を掠める瞬間があるのも、また事実である。
しかし。
一慶という頼もしい存在が、
(こんな私でも大切にしてくれる)
と、みなみに少しずつ変革を及ぼしているのもまた現実であった。
それは。
これまでストレスが食い気に向き勝ちであったみなみに、
「私には、カズがいる」
という、新たな安定感をもたらした。