【完】『ふりさけみれば』
こうなると。
果たしてかつて清家が主張した通り、みなみを対抗馬にする…という案が現実味を帯びてきたのである。
が。
当のみなみは、
「私にはカズがいればいい」
東京には戻らない、と彩に話していたほどである。
ただ。
力にいわせると、
「まぁこっちに慣れてもうたら、なかなか関東なんそには下向できんわな」
また戻ってくるんとちゃうかな、というのが見立てであった。
一慶には見当どころか先も読めなかったが、
「みなみが東京に来いというたら、西陣引き払って行くつもりやけどな」
そういうと、これまでそんな一慶の言動を見たことがなかった力は、度胆を抜かれた。
どうやら。
みなみという存在が、一慶にも少なからず影響を与えていることは間違いのないことのようであった。