【完】『ふりさけみれば』
デスクで頭を抱えていると、隣席の清家勲という先輩のアナウンサーが様子に気づいたのか、
「橘くん、どうした?」
「宝塚のチケットいただいたんですけど、ペアなんでどうしようって」
この清家勲という男、学生の時分は捕手として野球で鳴らし、甲子園では八強まで勝ち進み、クロスプレーや牽制で闘争本能を丸出しにする姿から、
──十勝の暴れん坊。
という異名を取り、地元の国立の大学に一般受験で入った苦労人でもある。
ドラフト会議の候補にも上がったが、
──プロでは先が短い。
といい、入局して会社員という堅実な道を選んだ経歴を持つ。
出が捕手だけに視野は広く、ときに意外なことをいう。