【完】『ふりさけみれば』
みなみの驚き様はかなりなもので、
「いったい何でまた」
声の大きさに周囲がビクッとなったほどである。
それはいい。
話を清家の件に戻す。
「武藤エリカ、みなみは知ってる?」
知ってるも何も、かつて女子大で、みなみと相部屋であったぐらいである。
「その武藤エリカと不倫してて、しかも」
恵里菜は真顔で、
「妊娠させちゃって」
それは。
大問題ではないか。
というのも。
清家には大学の同期であったという妻があり、その結婚式にはみなみも恵里菜も参列していた。
そんな身で。
現役のアイドルと不適切な関係を持ったばかりか、妊娠までさせた…となると、不祥事という単語だけでは済まされないスキャンダルではないか。
みなみもこれには、
「それはちょっと…」
口ごもってしまうほど言葉が見つからなかった。