【完】『ふりさけみれば』
夜。
帰ってから少し遅くはなっていたが、一慶に電話を繋いでみた。
「…みなみ?」
いつもと変わらない声に、みなみは安心感をおぼえる。
「ようやく一段落ついたさ」
「そっかぁ」
ほんなら良かった、とこれまた一慶はいつもと変わらない。
「で、アナウンス部はどうや?」
「清家さんがフリーになるって以外は変わらなかったよ」
「フリーって、清家さんが?」
一慶も初めて聞いた。
「何か不祥事があったみたいで、責任取って辞めるんだって」
「なるほどなぁ」
「ね」
「…ん?」
「もし、うちらに同じように何か起きたら、カズどうする?」
「うーん…考えたことないなぁ」
といいながらも、
「うちなりに何かコメント出すかも分からんな」
せやけど、と一慶は、
「みなみに迷惑はかけられんから、最悪のパターンな場合には、うちが何とかしたる」
「ありがと」
この頼もしさも、変わっていないようであった。