【完】『ふりさけみれば』
その清家がいったのは、
「共演者で関西にいる人に訊いてみてはどうか」
という案であった。
が。
三人いる関西のうち、落語家の浪花家贅六は新宿の寄席で昼席があって、もう一人の男性アイドルはツアーで札幌にいるはずである。
「あとは兵藤先生かぁ」
みなみはいった。
「それなら兵藤先生に訊いてみたらいいじゃないか」
のちにこの清家の一言が、みなみに多大な影響を及ぼすことになるのだが、このときはまだ分からない。