【完】『ふりさけみれば』

犯人探しは本題でないから置いておく。

ともあれ。

美珈のそうした話を聞いたことのある人物が、彼女を共同便所と表現したことは、想像に難くない。

それによって。

美珈のツイッターは荒れに荒れた。

かばったお笑い芸人のアカウントまで炎上する始末で、遂には本社の調査部門が動き出すという大がかりな案件に発展してしまったのである。

この件で。

河原崎美珈は謹慎処分が下され、ツイッターの閉鎖を余儀なくされた。

だが。

同時に。

「橘みなみに男がいるのでは?」

という疑念も、沸いてきたのである。

無理もないであろう。

図抜けた美女ではないが、背が高く、顔の彫りが深く、まるで自由なイタリア女のような、どことなく浮き世離れしたエキゾチックな顔立ちのみなみは、例のガッツリ系の女子アナと並んで、

──大食い女子アナの両巨頭。

と呼ばれるようになり、人気ランキングも圏外から十七位まで来たのである。



< 163 / 323 >

この作品をシェア

pagetop