【完】『ふりさけみれば』
6 闇を裂く
記事の内容は次のようなものである。
「人気急上昇中の女子アナ・橘みなみの過去は壮絶の一言に尽きる」
という書き出しで始まり、
「公式プロフィールには北海道函館市生まれとあるが、実際に生まれたのは札幌市」
という話がまず書かれてあった。
みなみも免許証の手続きで役所の書類を取り寄せた際、自身が札幌生まれなのはそこで分かってはいたが、物心つくころには既に函館にいたので、深く気にしていなかったのである。
記事は続く。
「彼女は両親に育児放棄され、保護施設を出てからは函館で養父と暮らしていたが、彼女が思春期を迎えた時期から、ほぼ毎日のように、養父から性的な虐待を受け続けていた」
とあったのである。
その後は、
「児童相談所に保護され、再び養護施設に預けられた彼女は、別の里親によって育てられ、地元の女子高から系列の女子大を経て女子アナとなり、今に至る」
という中身であった。
「…これ、違うよね? 雑誌が勝手に書いた作り話で、事実なんかじゃないよね?」
恵里菜は訊ねた。
が。
みなみは黙ったままでいる。