【完】『ふりさけみれば』

こんなときに。

以前であれば、差し詰め清家あたりがうまく処理してくれていたであろう。

が。

その清家は不祥事で辞めてフリーになり、円滑に人間関係をまとめられる立場の人材が、この場にはなかった。

なぜこの時期にこんな記事が出たのかは分からなかったが、

「梨沙の気持ちがちょっとだけ、分かるような気がする」

恵里菜は小さく呟いた。

みなみは俯いたまま、どうしたらよいものか困じ果てた様子で、その場にやがて膝から崩れ落ちた。

いっぽう。

一連の出来事を一慶が聞いたのは翌日の夕方で、居合わせた力や吉岡と食事をしていたが、パッと盃を投げ捨て、

「…!」

と、威嚇のような唸り声をあげた。

とりわけ。

河原崎美珈の言動を聞いた一慶はしばし黙って聞いていたが、

「…ほなしゃあない、やらいでかやな」

といいそのまま、さながら仇討ちでもするような勢いで東上しようとしたので、その場で吉岡編集者や力に引き留められたほどであった。



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