【完】『ふりさけみれば』
記事の反響は想定外に凄まじかった。
毎日テレビ局の通用口にはワイドショーのリポーターが張り付くようになり、関係がないはずの恵里菜や梨沙まで、マイクやカメラに追われるようになったのである。
上層部は、みなみに休職を勧めて取らせた。
休職、といえば聞こえはいい。
しかし。
体のいい、ほとぼりがさめるまでの追放のようなものである。
最初みなみは鶴見の自宅にいたが、次第にマンションの付近にもカメラを持った男がちらつくようになったので、
「京都に来たらどうや」
という力や彩のアドバイスもあって、大原の彩のカフェで手伝ったりしながら、休職の期間を過ごすことにしたのであった。
勧められて来てみると。
大原はすっかり夏も本番で、畦道に何本かひまわりが並んで咲いている。
「ここは別天地やろ?」
力は胸を張っていった。
「せやから前に京都に住んだらどうやいうたのに」
この一言に、
「…移住、真剣に考えてみようかなって」
これにはさすがに力が周章(あわ)てて、
「一慶にいわんでえぇのか」
と訊いたほどである。