【完】『ふりさけみれば』

だが。

まだ一慶にはやらなければならないことがあった。

みなみの例の記事が、事実なのかどうかを見極めて確かめる作業である。

これは。

函館にいるみなみの親に、訊いてみるのが早い。

電話で尋ねてみると、

「あれは事実だ」

という反応が返ってきた。

「やはりな」

一慶の読みは当たった。

そこさえ分かれば一慶は、根掘り葉掘り訊く必要性もなかったので、

「そちらはリポーターとか来てないですか?」

と気遣う姿勢を示し、

「すいません、自分みたいのが彼氏なばっかりにご迷惑かけて」

と謝った。

が。

「なんもさ、みなみだって女子アナだもん。テレビに出る仕事じゃ仕方ないもんさね」

みなみの母親の──血は繋がっていないはずだが──言葉に、一慶は救われた思いがした。

きっと。

いろいろあったのであろうが、それをおおらかに包み込む里親であったから、

(今の素直なみなみになったのかも知らんな)

というのが一慶の偽らざる感想であった。




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