【完】『ふりさけみれば』
送別会を開こう…という話になり、一慶がいつも集まっていた蛸薬師の居酒屋に行くと、
「よ、お先」
と力が早くもビールを飲んで待っていた。
「彩ちゃんは?」
「あいつ、来るかなぁ」
「リキお前、何をしでかしたんや」
「しでかしたってレベルやないけど、ちょっとした喧嘩みたいなもんは」
「あのなぁ…もうちょい互いに譲り合え」
「そんなん、カズにいわれるようでは俺も末期症状やな」
笑いながらジョッキを飲み干した。
一慶はキューバリブレを頼んだ。
「この店にキューバリブレとカリモーチョ出せるようにしたの、お前やもんな」
力は笑った。
「まぁな」
一慶はいたずら小僧のような顔をした。
「ただそれで、こないだ店長いうとったけど女の子の客が増えたんやて」
「へぇー」
「んな、へぇやあれへんがな。カズよう分かるな女心が」
一慶は話を変えた。
「リキかて、彩ちゃんとはどうすんねん」
「そこやねんけど」
力はぐいっと身を乗り出した。