【完】『ふりさけみれば』
夜。
品川駅で、
「お待たせ! カズ待った?」
「いや、そうでもないで」
待ち合わせたみなみを後部に乗せ、一慶のドラッグスターは走った。
みなみが見つけた新居となるマンションは、横須賀の逸見にある。
「今回は少し狭いから、今度はもうちょっと広い部屋にしなきゃね」
と、みなみは第一京浜を下る信号待ちで一慶に語りかけた。
六郷橋を渡り、川崎の銀柳街のアーケードを後へ飛ばし、鶴見橋を過ぎて、やがて桜木町のビル群が見えてくる。
吉野町の角を左に曲がり、睦橋を渡って高架を潜ると、堀割川に沿うように磯子へと出た。
しばらく潮風のする国道を行くと、工場が並ぶエリアを抜け、金沢のマンションの集まるエリアを後へ飛ばし、追浜を抜けてようやくたどり着いた。
「ここの三階が新居だよ」
初めて一慶は、新しい部屋に通された。