【完】『ふりさけみれば』
連れて来られたのは駐車場である。
「みなみって、免許あったっけ?」
「実は取ったの」
一慶が感心しながら歩いて行くと、さっき停めたドラッグスターのそばに、カバーのかかったバイクらしきものがある。
「実はね」
みなみがカバーを外すと、そこにはあまり見かけないフォルムの黒光りしたバイクが停まっている。
「…これ、もしかしてVRXか?」
一慶の推理はその通りであった。
「うん。VRXロードスターって名前らしいんだけど、たまたま安く手に入ったから」
どうやらみなみは値段で選んだらしい。
が。
「随分と通なマシンを選んだなぁ」
「カズと一緒にツーリングしてみたくてさ、頑張って倒れたときに起こせるよう練習したんだよ」
見た目はアメリカンタイプに近く、まるで漆で仕上げたかのような重厚な車体である。
「でもこれ、結構なくせ者やで」
「私向きでしょ?」
みなみは小さく舌を出した。