【完】『ふりさけみれば』
吉岡はいう。
「あんまり早々と行くと、せっかくの来客に丁寧なおもてなしができなくなるんです」
そこで。
「わざと少し遅く行って、支度の時間を増やしてあげるんです」
だからこの雨はよく京都を分かってる、と冗談めかしていった。
「でも…」
「それに先生は普段は京都でも郊外ですから、多少遅れても問題ないですよ」
まだみなみは納得し切れてなかったようだが、
「まぁ乗りましょう」
そう促すと車中の人となった。