【完】『ふりさけみれば』

パスタが運ばれてきた。

「私なんかはさ、生まれも育ちも東京だから、例えばパパラッチに追われたって逃げられないし、兵藤さんみたいな優しい彼氏もいないから、誰にも相談できないし」

みなみは恵まれてるよ、と恵里菜は、パスタを口に運んだ。

「それはいいんだけどさ、その兵藤さんと何かあったの?」

「それがね」

とみなみは、例の十五日の件を打ち明けた。

「うーん」

しばし恵里菜は考え込んでいたが、

「浮気ではないと思う」

「なんで?」

「だって浮気なら不規則だし、頻度ももう少し高いはず」

「なるほど」

みなみは納得した。

「しかも日にちが決まってるんだよね?…簡単には断定できないけど、もしかしたら誰かの命日みたいのじゃないかなぁ」

「どういうこと?」

例えばだけど、と恵里菜は前置きし、

「誰か兵藤さんにとって大事な存在の人が亡くなった日が十五日で、毎月どこか所縁のある場所に行ってるとか」

「でも前にいたのは京都だし、カズの実家は広島だし…日帰りって出来るのかなあ?」

「飛行機なら可能じゃないかな」

まだ釈然としない。



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