【完】『ふりさけみれば』
「で、まさか…」
「剥いた話、平たくいうといっぺんだけ」
愛と寝た、というのである。
これには多少なりと精神的に強くなっていたみなみも、ショックは隠し切れなかったようで、
「…」
言葉にならない何かを漏らした。
「みなみもショックやろけど、うちかてショックやってんで」
無理もない。
一慶にしてみれば。
実の娘と、そういう関係を持ってしまったのであるから、その衝撃は計り知れない。
「まぁそれはみなみと知り合う前やったし、それからしばらく会ってなかったし」
さすがに気まずくなったのか、一慶から愛を遠ざけるようになったらしい。
「で、じゃあ何で?」
「あれな、あいつが彼氏を連れてきよったんや」
「彼氏?」
「あいつの彼氏に会いに行ったとき、待ち合わせ場所間違えて、はぐれた原宿で撮られたってのが真相なんやけど、どこまでいうたらみなみに信用してもらえるか分からんくて」
みなみの脳が煙の出そうなほど熱っぽく、そんな風に思えたらしい。