【完】『ふりさけみれば』
だが。
交際は明らかにしてあったものの、一慶と同棲していることは誰にも打ち明けてない。
したがって。
仮に一慶に出て行かれても、みなみは吐き出す場がない。
京都の彩に訊いてみたものの、
「こっちには来てないなぁ」
彩から聞いたらしい力にも心当たりはないらしく、
「あいつどこ消えよったんや」
電話口で力が何か思い出したようで、
「みなみちゃん、もしかしたらあいつ広島におるかも分からんで」
とはいうものの。
「広島ったって…どこにいるのか、手がかりもないのに」
確かにみなみのいう通りであろう。
「よう話してたのは、宮島やったな」
それは。
みなみも聞いたことが一度だけあった。