【完】『ふりさけみれば』

数日後。

アナウンス部の机で、取材した話題を原稿にまとめ、読みながらストップウォッチで秒数と文字をにらめっこしていたみなみは、

「みなみ、ちょっと」

急に恵里菜に呼び出された。

「あのね…ピンチヒッター頼まれてくれない?」

みなみは驚いた顔で、

「いきなりどうしたの?」

と目を丸くした。

「実はラジオの収録で、私がやらなきゃならない仕事なんだけど、急に取材が入っちゃって」

浅香徹がメジャーに挑戦するらしいのである。

「で、スポーツ番組の代表で私が行かなきゃならないから、みなみにラジオ代わってほしいの」

お願い、と恵里菜は手を合わせた。

「大丈夫だよ。多分ひまだし」

スケジュールを確認した。

「大丈夫だから代わりにラジオやっとく」

「…ありがと!」

「早く行きなって」

「うん」

恵里菜は礼もそこそこに、支度を済ませ、慌ただしくアナウンス部を飛び出した。



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