【完】『ふりさけみれば』
「だってカズも毎日、原稿用紙に向かってるし」
「あれはビジネスや」
最初は自給自足のつもりで書いてたらしいが、
「うちが知らんうちに気がついたら、みんなが読んでくれとった」
だから余計ありがたい、と一慶はいい、
「なぎちゃんみたいに夢を追える人は、今の世の中はなかなかおらへん」
「そりゃまぁ、今は空気も読まなきゃなんないし」
「空気なんて読むもんちゃうやろ、あんなん吸うたり吐いたりするもんや。読めるような空気やったら目がチカチカしてしゃあない」
これにはみなみもたまらず吹き出した。
そういう剛胆さが、一慶を一慶たらしめている所以であったらしい。