【完】『ふりさけみれば』
6 脱出
ひとしきり。
河原崎美珈の騒動が落ち着いても、一慶の執筆のスランプは復調しないままであった。
こればかりは。
みなみもどうしようも出来ないでいる。
むしろ。
「もしかしたら、私が邪魔してるのかなぁ」
と梨沙に相談していたほどである。
「断言は出来ないけど」
そう梨沙は前置きした上で、
「少しだけ、距離を開けてみたら?」
といった。
「どうやって?」
「うーん、例えば兵藤先生に旅に出てもらうとか」
「こないだ広島とか行ったし」
「それ帰省じゃん」
「うーん」
みなみは頭を抱えた。
「確か兵藤先生、前は京都にいたんでしょ?」
「うん」
「それなら京都時代の友達に会ってリフレッシュしてみるとか」
みなみにはそれが名案とは思えなかったが、
「リフレッシュは大事だよ」
梨沙は妙案が出たように思っていたらしい。