【完】『ふりさけみれば』
終演後、みなみと一慶は結崎なぎさの楽屋へ土産を携えて訪問した。
「あっ、兵藤先生だ!」
結崎なぎさは一慶を知っていたらしい。
「先生の本、特に『さくらのみやこ』大好きなんですよ」
あとでサインしていただけますか、というので、
「そんなん、あとでなんて言わんと今すぐなんぼでも書いたるがな」
鞄から出された単行本の見返しに、持参していた筆ペンを左手に、慣れた手でサインを書いて行く。
「先生ってサウスポーな割に達筆なんですね」
みなみがいった。