【完】『ふりさけみれば』

結果として。

この企画書はチーフプロデューサーの目に留まり、

「これ、うちの昼の情報番組で使わせてもらっていいか?」

となって、番組に関わっていなかったみなみは、了承だけ出しておいた。

半月ばかり過ぎて。

みなみがアナウンス部の自分のデスクで、一慶が詰めてくれた手製の弁当を頬張りながらモニターを眺めていると、

「猛暑の今年はこれで決まり!」

というキャッチコピーと共に、一慶が普段しているように、シャツに糊を効かせて着る知恵が紹介されている。

喋っていたのは後輩のアナウンサーであった。

が。

みなみは別に、悔しさを感じない。

むしろ。

「あれでちょっと踏ん切りがついたかも」

と恵里菜に漏らしたことがあり、

「もしかして、みなみフリーになるの?」

と恵里菜が不安そうに逆に問い掛けてきたぐらいである。

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