【完】『ふりさけみれば』
もしかして、と愛は、
「隣の…ひょっとしたら彼女さん?」
「あぁ」
みなみは頭を下げた。
「いるって前にカズ兄ちゃんいってたけど、めっちゃ綺麗な人じゃん」
愛は笑った。
「実はね、私も」
と隣の外国人を指して、
「あ、こないだはどうも」
一慶は挨拶をした。
どうやら。
この外国人が、例の原宿で道に迷った愛の彼氏であるらしい。
「今度ね、彼のパパとママに会いに行くの」
「さよか」
「だから今度、もう会えなくなるから連絡しなきゃって、さっきまで話してたんだ」
「噂が呼んだようなもんやな」
一慶は肩の荷が下りたような顔をしてから、
「カズ兄ちゃん、ずっと今までありがと」
愛は頭を深々と下げた。
「いや、礼なんて」
「カズ兄ちゃん、彼女さんとしあわせにね」
一慶が何かをいいかけるのを遮るように、二人は駅の中へと消えて行く。
「…カズ?」
「もしかしたら、見えない意志がどこかにあるのかも分からへんな」
苦笑いをすると、そばにあった烏丸線への階段を降り始めた。