【完】『ふりさけみれば』
8 愛する人へ
夏が終わろうとしている。
みなみは局で開催されたイベントで司会をしたり、ラジオで宣伝に出たりと慌ただしい夏を過ごしていた。
いっぽう。
一慶は懸案になっていた童話をようやく仕上げ、新たに短編を書いた。
「愛する人へ」
という短編で、遠距離恋愛の物語である。
吉岡がチェックすると、
「これ、今度の最新号に載せましょう」
という話になり、秋には掲載された季刊紙が発売されることになった。
この頃となると。
みなみが同棲している事実は、恵里菜も気づいていたらしく、
「結婚式のときには司会するよ」
と恵里菜は冗談半分にいったりもした。
夏のイベントが終わりに差し掛かり始めた頃、みなみは少し具合を崩したことがあった。
梨沙が見ると。
顔が蒼白かったのである。
「ちょっと…みなみ、大丈夫?」
みなみは、
「多分…女の子の日が近いのかな」
といい、局で認められている生理休暇を取って、休むことにした。