【完】『ふりさけみれば』
みなみの体調は、生理休暇を終える頃には落ち着きを取り戻した。
一慶も執筆の間隙にベッドのみなみの枕元に来て、
「みなみ、うちがおるから心配せんでえぇ」
そうやってみなみの長い髪を撫でた。
休暇を終えたみなみは復帰するとすぐ、秋に放送が予定されている特大番組の、ナレーション録りの仕事に取りかかった。
いつものように。
リードを作り、出演する俳優や女優、タレント、芸人、歌手、弁護士、アスリート…とさまざまなプロフィールを読み込み、そこから原稿を作り上げて行く。
ときどきめまいと吐き気に襲われながらも、みなみは原稿を書き上げてから、耳鼻科で診てもらった。
「ストレス性の目眩」
という診断で薬を処方され、薬を飲んでナレーション録りも数日かけて録り終えると、さすがに具合が悪くなったのか、再び耳鼻科で診察してもらった。
だが。
「これは目眩ではないかも知れないですね」
と耳鼻科の医師はいい、紹介状を手に今度は山下町の総合病院にかかったのである。