【完】『ふりさけみれば』
山下町の総合病院で診てもらったみなみは、耳を疑うような診断を聞いた。
「おめでとうございます、妊娠してますよ」
みなみは顔が固まった。
「順調にゆけば出産は来年の初夏です」
だいたい。
二ヶ月から三ヶ月に差し掛かるあたりであるらしい。
みなみは…喜べなかった。
愛の件があったからではない、といえば嘘になるであろう。
しかし。
それ以上に、
「またニュースになる」
という不安も、頭をよぎった。
一慶が喜んでくれるかどうかも、みなみには先行きが分からない。
ただ。
今ならまだ、一慶にいわずに黙って堕ろしてしまおうという意識も、ないではない。
病院から局に戻ると、廊下で久しぶりに秋月しおんと出くわした。
「橘さんお久しぶり」
秋月しおんは相変わらずの颯爽ぶりである。
「ご無沙汰してます」
みなみは深くお辞儀をした。
そのとき。
急な吐き気が襲って、口を手で塞いだ。