【完】『ふりさけみれば』
夜。
逸見の駅に着くと。
出先から戻った一慶が先に待っていた。
「お帰りみなみ、確か今日病院やってんやろけど、体調どないやったん?」
一慶はバッグを持って肩を貸してくれた。
みなみは、
「あのねカズ…」
「ちょっと待て…今当ててみたる」
掌を前へ突き出した。
「うっ…」
「少し潮風で鎮めよか」
駅のそばに、小さな広場がある。
ベンチを見つけた。
二人は座った。
「…もしかして、子供でも止まったんか?」
みなみは目を丸くした。
「図星か」
黙ってみなみはコクン、と首を縦に振った。
「そっか…名前、さっそく考えてやらなあかんな」
「カズ…」
今まで見たことがないほど、一慶の喜びようはかなりのもので、
「よっしゃ、明日は赤飯炊いて提灯行列や!」
「ちょっと恥ずかしいって」
みなみは恥ずかしそうに頬を赤らめた。