【完】『ふりさけみれば』
みなみの誕生日が来た。
すでに函館の両親には結婚の了解も得て、入籍と挙式の日取りをどうするか…という段取りに入っている。
この日。
一慶は何か用件があったらしく、朝早くに横須賀を出た。
みなみは、仕事である。
お腹の少し目立ち始めたみなみは、ふっくらとした身体を隠すように、ゆったりしたラインのワンピースを着て午前のニュースを読んだ。
帰り支度を始めた頃、
「みなみ、確か今日は誕生日だよね? ささやかなお祝いがあるから」
と恵里菜に呼び止められた。
エレベーターを降り、恵里菜とロビーまで来ると、
「お誕生日おめでとー」
と、ディレクターのチーフになった梨沙も途中で加わった。
「今日は女子でお祝いの予定だけど、兵藤先生も一応あとから来るって」
幹事は恵里菜が引き受けたようであった。
会場は恵里菜が古くから通う横浜の山手のレストランで、
「隣の教会が目印だから、運転してても分かりやすくってさ」
この日は酒の弱い恵里菜がハンドルを握った。